不妊治療の「記録」、私はこうやりました②〜自分に合うツールを選び、記録を継続。淡々とつけることで、後悔のない「充実した不妊治療生活」を実現。

聞きなれないホルモンや薬、注射の名前。
クリニックから渡される重要書類はサイズがまちまち。
あっという間に積もり積もっていく、会計の記録ー。

マメに記録を取っておいたほうがいいことはわかっていても、なかなか継続するのは難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
不妊治療を経験された方たちは、どのように記録をとって、治療を進めてきたのでしょうか?
また、記録を通して、どのような変化が生まれたのでしょう?

治療を経験した方たちに聞きました。


—– この方に聞きました! —-
お名前:りこさん(仮名・34歳)
不妊治療の内容:体外(顕微)受精
治療期間:合計5年
子ども:0歳(生後半年)
*情報は全てインタビュー掲載当時のもの


 

  飽きっぽくても継続して記録がつけられるように、はじめにツールを吟味

ーー記録をつけようと思ったきっかけは、何かありますか?

つけ始めた理由は大きく3つあります。まずは何より、自分のモチベーション保つためです。それに、記録をあとから見返したかったのと、助成金の申請のために情報を整理しておきたい、というのがありました。

ーーどのように記録をつけていましたか?

生活のスケジュール管理やちょっとしたメモは全部デジタルでやっていたのですが、不妊治療の記録は手帳と透明ファイルにまとめることにしました。
自分で手を動かして記録をつけたほうが、あとから思い出しやすくて記憶にも残るので。

ーー手帳はどのようなものを?

手帳はB6判のものを使っていて、デイリーページがない、マンスリーページとフリーページのみの構成になっているものを選びました。
治療中は毎日イベントがあるわけではないので、デイリーページに空白ができてしまうと、モチベーションが下がると思って。それに、私は日記が続かないタイプなので (笑)。

ーーご自身の性格を分析した上で、ツールを選ばれたんですね。実際記録をつけるときには、どのようなことを工夫されていましたか?

まず自分の性格を考えたときに、「視認性」が高いものにしないと続かないな、と思ったんです。ただ書いているだけだと、そのうち私はやらなくなるなと。

そこで、例えばある月のページを開いたときに、何回病院に行ったかを一目で分かるようにしたくて、キャラクターのシールを貼ったりしました。生理がきた日は別のシールを貼って。ページを見たら、いつ何があったのかがパッと分かるということを、全体を通して気を付けていました。

通院した日は、治療何日目か、治療の内容、服用した薬、かかった金額と負担割合を記入しました。

この手帳は、不妊治療の記録のためだけに使って、日記的なことは書かないようにしていました。「今日の治療は痛かったー」とか「辛かったー」とか、そういうことは書かずに(笑)、本当に記録だけに使っていました。

でも、検査結果などを見て、今周期ダメだったら次回もやるんだろうな、というような検査については、そのとき先生に聞いたことや自分が感じたことをメモするようにしていました。
そういった検査結果や、本当に小さいレシートタイプのものなどは手帳に直接貼って、次回の自分へのメッセージにしました。

ーーフリーページはどのように使われていましたか?

通院した日の内容を1ページに記録する、という使い方をしていました。まず、「採卵」などの治療行為を書いて、続けて医師から聞いた内容、理解した内容のメモをとる、という形で箇条書きにしていました。

それと、巻末ページには治療費をまとめていました。治療費はマンスリーページにもまとめていたのですが、きっと何周期も治療を繰り返すことになるだろうと思っていたので、周期ごとにかかった費用をまとめて算出していました。病院の料金表も貼り付けていましたね。

ーー「ご自身が分かりやすいものを作る」という工夫が随所に現れていて、とても参考になります。ファイルはどのように活用されていましたか?

基本的に、病院からもらう施設案内や治療方針の説明書のファイリングに使っていました。各種検査結果は、先生の説明や自分が調べたものなどを手書きで書き込んでいました。

これも将来、同じことをすることになった場合に、比較・分析しやすくするためです。

あとは、仕事の調整に役立つ採卵や移植のスケジュール説明や、不妊治療助成を受けるために必要な領収書や明細書を入れていました。

 

  医師とのコミュニケーションや助成金申請にも役立った、記録

ーー記録をつけていて、医師とのコミュニケーションには役立ちましたか?

それは本当に役に立ちましたね。

私が行っていた病院は一人の院長先生が不妊治療を担当されてて、待ち時間がとても長い割に診察時間は短くてサっと終わっていく、という感じだったんです。だから、聞きたいことをメモして行かないと聞けずに終わってしまう、っていうところがあったんですよね。

手帳をつけはじめる前は携帯にメモをしたりもしていたんですが、一冊にまとめてると、前のページ見返して「あ、これも聞いておこう」とか、前の周期に同じような治療をやってた頃のことを見返して「これ気になったけど、あのとき聞けなかったから今回聞こう」という感じで進められました。

一度転院もしているのですが、前の病院での治療や検査について聞かれた時も過去の記録を見返して伝えられたことがあって、パッと見てすぐに分かる記録って大事だなと強く思うようになりました。

あと役に立ったのは、助成金の申請ですね。「もうすぐこの1周期の治療が終わるから一度助成金の申請に行かなきゃいけないな」というときに、パラパラと手帳を見返して、申請の心積もりができました。
最終的に領収証と金額が合わないな、みたいなことはたまにはあるんですけどね(笑)。

 

  するべきことや重要度を整理し、一つのプロジェクトを進めていく感覚に。記録をつけていたことの最大の収穫は、「治療を楽しく終わらせられたこと」。

ーー不妊治療中は不安定に気持ちが揺らぐことも多いですが、モチベーションや気持ちの持ちようという意味では、記録はどのように役に立ちましたか?

変に聞こえるかもしれませんが、私、最終的に楽しく終われたんです、不妊治療を。これが記録をつけた一番のメリットだと思っています。

5年間不妊治療をやってきて、結構夫とケンカもしたし、検査の結果の数値って決して期待が持てるものばかりじゃなくて、どちらかと言うと落ち込んでしまうような数値の方が多かったんです。だから、自分の浮き沈みも激しくて、心も体もきつかったりして。
でも、最後の1年くらいはすごく充実した不妊治療生活だったな、という満足感が大きいんです。

それは、余計な感情をそぎ落として記録を淡々とつけていったことで、一つのプロジェクトみたいに、今のTodo、重要度、これはクリアした、これはクリアできなかったから代替策としてこれ、というような、仕事や勉強をするときのような頭の使い方を自然にできるようになったのかなと思います。
やれることはちゃんとやってるんだから、これでだめなら次に行くしかないな、とか、ドライな割り切りが自然にできるようになってきたんじゃないかな、と。

ーーお話ありがとうございました。記録をつけたいけれど続かない、という方は多いと思います。何かアドバイスがあればお願いします。

やっぱり溜めないことですね。こまめに書くことが勝手に習慣づくような仕組みをつくることが大事だなと思います。
凝った日記帳でいっぱいペン持って書いて、というのは3日坊主で終わってしまうことも多いと思うので、自分の気に入ったツールで手軽に記録を取れるというのが大事だと思います。

 

(取材・文/瀬名波 雅子、写真/内田 英恵)