「誰も答えは持っていないから、家族というチームで探していく」 ステップファミリーの中で見つけた「3ページ目」の可能性を、全ての家族に伝えたい。<後編>

「ステップファミリー(*注1)」として小学生の息子さんと3人の生活を送っている柴田純治さん、土屋志帆さん夫妻。家族をチームとして作っていく、そのプロセスを歩むお二人に、この<後編>ではそれぞれの葛藤にフォーカスを当てながら、家族としての、そしてパートナーとしての「3ページ目」について話を、伺った。

<前編>はこちら

(*注1) ステップファミリー:再婚や事実婚により、血縁のない親子関係や兄弟姉妹関係を含んだ家族形態

土屋 志帆 / Shiho Tsuchiya(妻)1981年生まれ。(株)Co-leaders代表取締役、プロコーチ、システムコーチ。新卒で(株)リクルートジョブズにて広告営業の後、人材紹介コンサルタント、人事、教育研修を経て、2013年よりコーチと会社員のパラレルキャリアを築き、2017年に夫と共に起業。個人や家族や組織の変容のサポートや学びの場のファシリテーションを行う。プライベートでは、結婚、出産、離婚、シングルマザー(7年)を経て2016年に再婚。ステップファミリー(血の繋がらない家族)を構築中。

柴田 純治 / Junji Shibata(夫)1977年生まれ。(株)Co-leaders代表取締役、プロコーチ、プロジェクトマネージャ。京都大学工学部中退後、ITベンチャー企業へ入社。インフラエンジニア、プロダクトマネージャ、プロジェクトマネージャ、子会社取締役と幅広い経験を持つ。その中で、人材マネジメント、多拠点間のチームビルディングにも携わる。現在はパラレルワーカーとして、会社員をしながら2017年株式会社Co-leadersを設立し、オンラインワークショップ等を通じ、家族やパートナー、ステップファミリーへの支援を行っている。
www.co-leaders.co.jp/

 


血ではなく、これまでの時間と密度の差

  関わりの中で感じる孤独

― 志帆さんと息子さんの、「ぶつかりきって、次に行く」というやり方に加えて、純治さんが入ったことで新しい解決、「3ページ目」が生まれたわけですよね。

柴田 でも、1年かかったかな。ほんと、全然入れなくて、二人の間に。

土屋 その関係にずっと嫉妬してたんです。

柴田 嫉妬っていうかね。ま、嫉妬だよね。(笑)

僕からは、志帆と息子がタッグ組んでて、僕が1人で、っていう2対1に見えるし、息子からは、「純ちゃんとママはいつも一緒だ」っていう2対1に見えるらしくて。志帆もその板挟みになっちゃうし。そこは辛いし、今もまだ悩んでいるところですね。

― それは、「寂しい」という感じですか?

柴田 孤独に近いのかもしれない。除け者にされてる気がしてしまう。何かあると息子はまず「ママはどう思うの」って言うし、「僕の存在意義ってなんだろう」って。チクチクして、その場から逃げたくなるような感じが、特に最初は強かったですね。

― 息子さんにも、そういう気持ちはあったんでしょうか?

土屋 それはあるみたいですね。私に怒られたときに、純ちゃんに重ねて言われたりすると、「2対1で怒られた」って感じることもあるだろうし、そういう瞬間はありますね。

でも、純ちゃんと息子の時間が増えることで、少しずつバランスがとれてきたのかもしれないです。息子と純ちゃんとの関係性が濃くなっていくほど、その重みが私に乗ってこなくなっているのかも。

 

  寂しい気持ちをまっすぐ伝えること

柴田 一緒に暮らしてみて、志帆と息子の関係はすごく強固だなと感じますね。そもそもお母さんと息子のつながりって強いものなんだろうけど、それ以上のつながりを感じる。踏み入っていいのかどうかという葛藤すら生まれます。

― それは血のつながりなんでしょうか?

柴田 血というより、時間と密度かなって。息子が生まれてからの7年間と、僕が出会ってからの1、2年間との、圧倒的な時間と密度の差を感じる。2、30年経ったらもしかしたらそんなのは関係なくなるのかもしれない。だから今が一番きついんだろうなって。

― その孤独を感じたとき、どういう風に消化してきたんですか?

柴田 基本的に僕は前向きなので、いろんなところから前向きな考えを引っ張ってこられるんですね。それと、やっぱり時々は直接志帆に伝えるかな。「寂しさを感じるんだよね」と。たまにそれで喧嘩になったりもするけれど、それでも早めに出したほうがいいかなって。

― そこで、「僕は寂しい」って言えないお父さんは多い気がします。

柴田 そう、うちの父もそういうことを全く言えない人でね。それが反面教師なのかなぁ。うちの父もシングルマザーの息子なんですよ。

「そういう父の子どもとして生まれた僕が、今血がつながらない子どもと一緒に住むことの意味ってなんだろう」とか、さらに「自分が今ここにいる意味ってなんだろう」とか、そういうことを考えながら、自分を整えていく。

そのプロセスも彼女に話すということは、すごく大事だと感じます。

 


あるはずがないと思っていた愛のかたち

  誰も知らない答えを探すワクワク感

― 改めて、家族が対話していくためには何が大切でしょうか?

柴田 対話の場で僕が一番大事だなと思うのは、その場で出されたものをリスペクトすることです。「言ってくれてありがとう」っていう気持ちを持つこと。誰に対してもね。

とりあえず出してみて、皆で意見を重ねていって、「それってワクワクすることかな」って考えてみる。

土屋 そして、誰かの意見に合わせるんじゃなくて、混ぜたらどうなるかなって。

― とすると、誰も結論を知らない場合もあるわけですね。

土屋 そうそう。

柴田 第3の答え、これも3ページ目だよね。

土屋 確かに3ページ目だね。(笑)

柴田 親が持っている答えも子どもが持っている答えも最終的な答えじゃないかもしれない、本当の答えはまだ他にあって、それを探す作業ってすごく楽しい。そこに気づけると、いろんなことがうまくいく気がします。

 

  自分の夢と向き合う「怖さ」を越えて

― ステップファミリー自体がある意味3ページ目とも言えますよね。そこに、本当のワクワクがあるのかもしれないですね。

土屋 ほんとそうかも。私、結婚を決めるまでは、次こそは失敗してはならないって思ってたんですよ。着実に、階段を一歩一歩あがっていかなくては、って。そういうときに、純ちゃんが「とりあえず結婚してみる?」みたいな感覚でポンと投げたんです。そういう、階段を飛び越える感覚は、まさに3ページ目かもしれないですね。

柴田 僕は、志帆が夢を語るのを聞いて、是非志帆には、その夢をかなえてほしいなって思ったんですよね。直接それと結婚とを結びつけたわけじゃないけど。

― 志帆さんの今の夢はなんですか?

土屋 変わってないですね。子どもを連れて世界中を旅しながらコーチングをしたいな、って。

― 素敵ですね。

土屋 実は自分の夢と向き合うのが怖くて、ちょっと茶化しながら「夢のまた夢なんだけどね」って感じでポロっと言ったら、それをしっかりキャッチしてくれていたんです。

気がついていなかったんですけど、私、シングルマザーっていう呪縛の中にいたんですね。子どもを食べさせて行かなきゃいけない、自分も自活していかなきゃいけない、だからひとりで頑張らなきゃ、というところにずっといたなって。だから夢の方をなるべく見ないようにしていた。

結婚することも怖かったです。「子どもを巻き込んで結婚して、また失敗したらどうしよう」とか、「彼が子どものことを本当に愛してくれるのかな」とか。別の人との子どもを愛してくれる人なんて、本音ではいるはずないだろうってずっと思っていたんですよ。

自分のことを見てくれても、息子のことを愛してくれないなら、それは幸せになれないと思って、そこがすごく怖かった。

 


息子との距離感、そこにある思い、願い、喜び

  「大事な人」の「大事な人」を「大事」に思う

― 純治さんは息子さんを愛していらっしゃいますか?

柴田 愛してるかどうかと訊かれたら、正直、全然わかんない。でもね、結婚して3人で生活を始めて出てきた僕の夢は、「息子が20歳になったら一緒に呑みたい」ということなんです。

息子が連れてきた友達とも呑みたい。僕の友達と息子も一緒に呑んでくれたらいいな。そんな風に、僕のつながりと彼のつながりが交差するのが、僕の夢になった。

だから、子どもとして愛する、という実感は正直ないけど、ただこの子が、すごい大人になってくれたらそれはそれで楽しいだろうなって思うんですね。で、そこに僕のエッセンスがちょっとでもあったら、それもまた嬉しいんじゃないかってね。

― それってすごい愛じゃないかと思います。

土屋 私が、純ちゃんと純ちゃんのご両親から学んだのはそれだなと思ってます。大事な人の大事な人を大事にすること。それは、すごい深い愛だな、って。

たとえば、純ちゃんのご両親は純ちゃんを愛してるんです。だから、純ちゃんにとって大事な人だから、それもあって大事にしてくれるんだろうな、って。すごくありがたいなと思っているんです。

今の話でも、純ちゃんは息子を大事な存在だと思ってて、だからこそさらにその息子にとって大事な友達も大事にしてくれるっていうことですよね。

自分にとって大事な人やもの、夢を大事だって言ってもらえたら、自分を大事って言ってもらえる以上に受け入れてもらえたって思えるんですよね。

そのことを、私は学びました。そんなものがこの世にあるはずないと思ってたのにね。

 

  3ページ目の先に見る愛のある喧嘩

― 改めて、「3ページ目」ってカギになる概念かもしれませんね。「3ページ目、行ってみよう」って、とても分かりやすいですし。他の家でも使えそうですよね、喧嘩になったときとかに。

柴田 なんかね、愛のある喧嘩の仕方がいいですよね。お互いを傷つけあうような喧嘩はもちろん簡単だけど、それよりはみんなで「3ページ目」を見つけるような喧嘩、っていうか。

― 純治さんと息子さんの間で、二人だけの喧嘩はあるんですか?

柴田 まだないんですよ。まだ加減がわからなくて、感情をたまにぶつけるとすごいひかれてしまう感じで。「怖い」って泣かれたりとかね。

僕が感情を出すと、ちょっと萎縮させちゃってるかなっていうのが、特に去年の今頃は多くて。わーって僕が言っちゃったらキューってなっちゃうっていうか。

― お話を伺っていると、二人で喧嘩をするのも時間の問題のようにも感じます。

柴田 そうなると嬉しいですね。

土屋 私が良い意味でもうちょっとフェードアウトしていくと、そうなるのかもしれないですね。

柴田 それはそうかもしれないね。息子と二人で話をしてたはずなのに、気づいたら「ママはどう思うの」って言われちゃうことがあって、ママのところに逃げていかれてしまう感じというか。

そこで僕が割って入ると泣かれちゃうんだけど、そこはもしかしたら、成長して体格が良くなってくると、肉体的にも対等になって、ガチの喧嘩もできるのかもしれないですね。

― これからどんどん面白くなりますね。ガチの喧嘩したり、一緒に飲みに行ったり。喧嘩して、「まあ、いいから飲みに行こうぜ」みたいな。

柴田 楽しみです。うん。それはやりたいなぁ。

 

  息子の小さな変化が嬉しい

柴田 あとは一緒に生活してて、僕の口癖を真似てるのを聞くと、ちょっとうれしかったりします。たとえば「なるほど」、とか。これ、多分僕の口癖を真似てるよね。

土屋 うん、それから「確かに」、とかね。「確かに」って、人の話を聞いてるときに、よく純ちゃんが言うんですけど、それも真似てる意識もないほどよく使うよね。

― 少しずつ純治さんのエッセンスが入ってきているんですね。

柴田 そうだとしたら嬉しいですね。 (笑)

 


誰もがリーダーで、誰にでも可能性があることを伝えたい

  二人で起こした会社に込めた思い

― 最後に、お二人で新しく立ち上げた会社のことを、少しだけ伺えますか?

柴田 会社の名前が「Co-leaders」っていいます。「共に」の「Co」と、「リーダーたち」ということで。「あらゆる人がリーダーですよ」っていう思いを込めて名づけました。ベースはコーチングやワークショップの提供で、家族やパートナーシップの絆、チームを作るお手伝いができるといいな、と思って作った会社です。僕はまだ会社員を続けていて、つまり会社勤めをしながら起業したという形なので、「こんな働きかたもあっていいよね」って社会に示したい、という意図もあります。

土屋 私は、一度離婚を経験して、でも、もう一度純ちゃんを信じて家族を作ってみたいと思いました。そこに学びがあったと思っています。ずっと、「親ならこうすべきだ」というような、自分が正義と信じていたものに縛られすぎていたなって。

私たちと同じようなステップファミリーだけじゃなく、世界中のありとあらゆる家族、同性婚の人たちとか、事実婚の人たちとか、子どもがいるいないにかかわらず、すべての家族に「3ページ目」の可能性があることを伝えたいな、と思っています。

取材・文 / 服部 美咲、写真 / 望月 小夜加、協力 / 高橋 慧太

 


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