前回の記事(「不妊治療」をはじめる前に、知っておきたいこと)では、不妊とはなにか、そして不妊の原因、治療の流れを見ていきました。
ここでは、不妊治療ってよく聞くようになったけれど、実際に増えているのか。
そうならば、原因はなにか? さらに、日本の不妊治療の特徴を見ていきます。
*この記事では、編集部が選んだ「不妊・産む・産まない」にまつわる国内外のニュースやリサーチを、コラム形式でお届けします。
不妊治療って、実際増えているの?
最近、ニュースやテレビでも、不妊治療について見聞きする機会が増えました。
実際、その数は増えているのでしょうか?
国立社会保障・人口問題研究所の調査(2015年)によると、いま日本国内で不妊治療や検査を受ける夫婦は5.5組に1組。そしてその数は、年々増加傾向にあります。 <参考※1>
不妊治療が増えているのは、なぜ?
では、不妊の検査や治療を行う夫婦が増えているのはなぜでしょうか。
様々な要因が考えられますが、一番影響があると言われているのは、晩婚・晩産化の影響です。<参考※2>
平均初婚年齢と、平均出産時年齢の推移(1980年〜2013年)
35歳以上で初めて出産をする人も、年々増加しています。
なお、日本産科婦人科学会によると、日本国内で体外受精などの生殖補助医療の結果生まれた子どもは年間4万7千人を越え(2014年)、その年の出生児全体の、約21人に1人が高度不妊治療により誕生しています。 <参考※3>
日本の不妊治療の特徴は?
晩婚・晩産が少子化や不妊治療件数の増加に影響を与えているのは、日本だけの話ではありません。先進国を中心に、不妊治療の件数は年々増加傾向にあります。
それでは他国と比べて、日本の不妊治療にはどのような特徴があるのでしょうか?
2016年、「国際生殖補助医療監視委員会(International Committee Monitoring Assisted Reproductive Technologies:ICMART )」が世界各国の体外受精の出生率を公表するレポートを出しました。<参考※4>
これによると、採卵1回当たりの出産率は60カ国の平均が20.1%なのに対し、日本では6.2%で最下位。
一方で、体外受精の実施件数は第一位でした。
出産ジャーナリストの河合蘭さんは、日本の体外受精による出産率の低さについて、著書(不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」)の中で以下の原因を指摘しています。
(1)晩婚化・晩産化の影響
(2)「自然志向」が強く、排卵誘発剤をできるだけ使わない方法が好まれている
(3)学会が作った治療法のガイドラインが存在せず、自分に合わない治療を繰り返してしまう
例えば英国では国の機関による適正な不妊治療の診療ガイドラインがあり、米国では施設ごとの妊娠成績が公開されています。どちらも国の事業です。
日本の体外受精出産率が国際的に見て低いのは、国民が科学的根拠のある医療を受けるための国の仕組みが弱いことも、河合さんは著書の中で指摘していることです。
こうした状況を踏まえて、子どもが欲しいと考え始めたら早めに検査を受け、対策を考えることが大切です。
<参考リンク>
※1 国立社会保障人口問題研究所「第 15 回出生動向基本調査」(2015年6月)
※2 厚生労働省「母の年齢(5歳階級)・ 出生順位別にみた出生数」
厚生労働省「不妊治療をめぐる現状」
(文・UMU編集部)