【イベントレポート】 自分自身の健康や豊かさ、後回しにしていませんか?働く女子の ‘’well-being’’思考術〜これからのシアワセの形って?〜

6月8日(土)、UMU運営会社(株)ライフサカス代表の西部沙緒里と、メンターマッチングのビジネスを行う(株)MANABICIAの池原真佐子さんがコラボして、働く女性が「自分の幸せとwell-being」についての理解を深めるイベントを開催しました。
会場にはこのテーマについてなんらかの課題や意識をお持ちの、20代から40代までの働く女性が集まりました。

 


  イントロダクション

イベントテーマである「well-being」とは「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」と定義されています。
まずイベントの冒頭、今回このテーマを選んだ理由について、池原さんと西部より説明がありました。

自分の幸せを後回しにしていないか?

池原さんは、多くの働く女性が仕事や家族を優先しするがゆえに、自分自身の健康や豊かさを置き去りにしている状況を危惧していました。また西部も30代半ばから自身の身に起こる体験の数々を経て、この年代の女性が直面する問題や悩みについて、それを共有できる場が極端に少ないことを課題に感じていました。
その二人の思いが、今回この企画を実現。自身も苦悩した二人だからこそ伝えられるものがある。そんな二人の体験をシェアするところから会は始まりました。

 

  まさこ&さおりのストーリーテリング

まずは池原さんの自己紹介からスタート。池原さんは現在パートナーとお子様とドイツにお住まいで、月に一度帰国して日本での仕事をこなしています。新卒でPR会社に就職し、その後教育関係のNPO団体を経てコンサル会社で人材教育に携わりました。そこで会社員をしながらINSEAD(Executive Master in Consulting and Coaching for Change :現在はEMC)へ入学し、コーチングと組織開発の修士を取得。その同時期に起業します。
順風満帆の華やかなキャリアを歩まれているように見える池原さんですが、起業に至るまでの葛藤や体調不良など、ご自身の苦しんだ体験を包み隠さず語ってくださいました。

苦しみから救ってくれたのは「人の支え」

池原さん:
大学院(INSEAD)と会社勤めをしながら起業を決意した時は、なかなか周囲からの理解を得られず苦しみました。その時、女性は社会や家庭の中で、常に様々な役割を求められることに気付かされます。当時の私には子供を持つこととキャリアの両立がイメージできず、そのプレッシャーから鬱状態になりました。その後、婦人科系疾患をきっかけに出産を決意し子供を授かります。でも夫は臨月から海外転勤になり、私は日本に残ってキャリアを継続する道を選びました。
自分で選んだ道とはいえ、一人で育児と仕事に追われ、再び心身ともに疲弊しました。仕事はやりたいのに限られた時間の中で思うように進まない。何が楽しいのか、幸せってなんなのかわかりませんでした。
落ち込んだ時もワンオペ育児に翻弄されていた時も、支えになったのは、相談にのって励ましてくれる「人」でした。その経験から、キャリア構築に悩んでいる女性にメンターをマッチングさせることで、その人の支えになりたいと思い、メンター育成とマッチングの事業を立ち上げました。

MANABICIA代表の池原真佐子さん

 

続いて西部のストーリーが語られます。働く女性のライフステージにおける健康を応援することをミッションに現在会社を運営する西部ですが、36歳で乳がんになり闘病生活、その後37歳から不妊治療を経験するというヒストリーを持っています。
ガンの告知も不妊宣告も、突然ブロック屏が落ちてきたような衝撃だった、と言う西部。その衝撃をどう受け止め、起業に至ったのか、10代の歴史から振り返りました。

病気によって人生の軌道を引き直す

西部:
もともと健康管理の意識は皆無で、自分の身に何か起こるなんて想像すらしたこともなかった。だから精密検査でガンと診断された時はまさにブロック屏が落ちてきたような衝撃で、現実のこととは思えませんでした。治療の山場を越えて、ようやく日常に戻れそうな時に今度は不妊治療が始まります。ガンの後遺症と不妊治療の心身のつらさが重なりとても苦しかった。仕事に復帰したものの、不妊治療との両立は困難を極めます。
その頃、周囲に不妊治療の話を打ち明けると、驚くほど多くの治療経験者や、今治療中だという告白を聞きました。そして、なぜこんなにも苦しんでいる人がいるのに社会や企業のサポート体制がないのだろう、と憤りました。何かしなければいけない、と感じこの会社を作ったわけです。
結果的に不妊治療が実り、現在2歳の娘がいます。
私は若い頃から自分の体のことを軽視していた。だからガンは私へのアラートだと思っています。一連の経験によって、私は自分の健康を意識し、そして人生の軌道を引き直すチャンスを与えられたと思うんです。

ライフサカス代表の西部沙緒里(左)

二人それぞれのストーリーに、皆さん真剣に耳を傾けます。

 

  働く女性のwell-beingとは

後半は、池原さんと西部、それぞれ違う視点から、女性の幸せと健康の関係性を専門知識も交えて紐解いていきます。私たちは意外なほど自分たちの体のメカニズムを知らず、そしてそのことがどう仕事や生活に影響をもたらしているのかを学びました。

心を解放し、自分の思考の癖に気づく

池原さん:
現在は30代の7割の女性が働く時代。そして働く女性は男性に比べ人生の岐路がとても多いのです。私自身、育児とキャリアの両立に焦り、心も体も限界まで追い詰められた時期がありました。だからその状況を変えるために強制的に休息を取り、自然の中で自分を見つめ直しました。
そして、幸せって考えるのではなく、体で感じるものだと気づいたんです。幸せを頭で考えていた時は、自分に課した目標をクリアしてはまた基準をあげて、きりがなかった。でも、自然の中に身を置きリラックスしたことで、幸せを感じとる感覚を取り戻せた。その感覚の積み重ねこそが、精神面と肉体面での健やかさにつながるのです。
そしてもうひとつ大切なことは、自分の思考の癖を知ることです。つい人と比較してしまう、すぐに自分を否定してしまう、そういった思考の癖に気づく。気づいたらそれが自分にどんな不可をかけているか見つめ直したり、自分が感じていることを客観的に知る。その習慣を身につけると、心の病に進むことを防ぐことができます。

続いて西部から、体を健康に保つことで見えてくる「幸せ」とはなにか、女性ホルモンとの関係性を交えながら解説しました。
途中、女性の体についてクイズ形式で問われると、なかなか答えが出ず、いかに自分たちの体について知らなかったかを自覚させられる場面もありました。

ヘルスリテラシーが幸せの鍵

西部:
多くの女性の健康問題は、ちょうどキャリアが勢いにのるタイミングに起こりがちです。だからこそ女性が健康を抜きに幸せを語るのは根っこのない木と同じ。
まずは私たちの体の最重要ファクターである女性ホルモンについて正しく知りましょう。全身の機能に影響を与え、そして心身を守る役割を果たしています。
そしてもうひとつのキーワードは「ヘルスリテラシー」。自分の体を正しく知り、時々に必要な健康情報を手に入れて、それを日常生活の中で活かす能力のことです。残念ながら日本人女性は、先進国女性の中でこのヘルスリテラシーが非常に低い。健康への意識を高めれば、選択できる人生の可能性が増える。つまり最強のライフデザインスキルになるんです。健康であることが、幸せの土台の一つといえます。

皆さん熱心にメモを取りながら聞いています。

 

  女性同士ならではのクロストークタイム

ここまでの二人のトークを聞いて、参加者の方々からは普段はなかなか聞けないようなプライベートな質問や悩みがシェアされました。いくつかご紹介します。

Q:年齢的に妊娠を焦る気持ちと、仕事に邁進したい気持ちの狭間でどうすればいいのか混乱しています・・・

西部:
将来的に妊娠を希望するのであれば、フィジカル面に問題がないか検査をしておくと良いでしょう。心の安心材料ができれば、産むタイミングの判断もしやすくなります。

池原さん:
妊娠出産すると仕事のスピードが落ちるという発想を変えてみると良いかもしれません。実は生産性が上がったり、思考が変わってもっと良い仕事ができたりもします。

Q:共働きで子供が2歳です。今日の話を聞いて生活を見直したいと思いましたが、この分刻みの生活の中で、どんなタイミングでどう見直したら良いのでしょうか。

池原さん:
仕事や生活スタイルを変えるといった大きなことではなく、まずは日々の中でできる小さなことからで十分です。いつもの食事の一品を健康的なものに変えるとか。極端な判断をしようとする必要はありません。

西部:
定期的な家族会議がおすすめです。夫婦それぞれが今意識しているものを共有しながら少しずつ変える実験をしてみる。一人でやろうとするのではなく、家族単位で取り組んでみてください。

ひとりひとりの質問に丁寧に答える池原さんと西部

 

  個人の課題を共有できたグループワーク

参加者の皆さんで3〜4名のグループに分かれ、現在抱えている課題を共有する時間を取りました。
その後、グループごとに共有したものを発表。初対面同士、そして似た課題意識を持っている女性同士だからこそ話せたことが多くあるようでした。

・普段、身近な人や同僚とはこういった話はあまりしたことがなくて、不妊治療のことについて話せたことが嬉しかったです。
・みんなそれぞれ色々な出来事があって、次のライフステージをどう歩んでいくべきか迷っていることを知りました。
・職場だけでは得られない情報を共有しあえたので、外に出て人と会う場は大切だと改めて認識しました。

緊張感もすぐに解け、グループごとに話が尽きませんでした。

 

今回のイベントは、普段の生活ではなかなか出会う機会のない、でも同じ時代にそれぞれの人生を懸命に生きている女性たちが集まりました。利害関係がないからこそフラットに相手の心に寄り添えたり、素直に苦しみを打ち明けられたり。そういう場や人があることで、ヘルシーなライフスタイルやメンタリティを持ち続けられると西部は言います。

参加者の皆さんが一体感に包まれるような、優しくあたたかいものが胸に残る、そんなイベントになりました。
ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

 


文・写真 / タカセニナ、運営協力 / 北堀夕唯、会場協力 / SENQ 霞ヶ関