UMUには、コミュニティメンバー、インターン、編集部など、さまざまな立場でさまざまな人たちが関わっています。共通するのは、UMUが好きで関わっていること、だけ。
年齢も住む場所も仕事もまるでバラバラなメンバーたちがランチタイムに、深夜に、自然と集まるここ、給湯室。
UMU的なこと、全く関係ないこと、人生のこと。
結論もオチもなく、すっきりとも終わらない。だけどなんかここで吐き出すと、明日もがんばれそうな気がする。
そんな会話が繰り広げられているある日の給湯室、みなさんにもおすそ分けします。
今回は、UMUのメンバーにもファンが多数の朝ドラ「虎に翼」がテーマ。
好きなシーンや印象的だったセリフなどをシェアし、自分たちが暮らす今の時代にピントを合わせながら、あれこれとお喋りしました。
連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)
日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー。1930年代、それぞれの生い立ちや環境に振り回されながらも、法学を学ぶ数少ない女子学生同士が強くつながり、同窓の男性たちとともに学び、法曹の世界を目指していく。主人公は寅子(ともこ、通称とらちゃん)。
今日の給湯室メンバー
Y
30代女子。UMU編集部メンバー。一人暮らしを満喫しながら、のんびりと、もやもや多めに生きている。夜の散歩と、こたえのないことを話し続けることが好き。
M
40代女子。会社員。UMUコミュニティメンバー。次女の死産をきっかけにこの世に普通なんてないことを知る。老眼により人生初の眼鏡(遠近両用)生活を満喫中。視界はクリアになった気がするが、自分の人生については迷ってばかりで見通せない。
R
40代女子、会社員。UMUコミュニティメンバー。10年を超える高度不妊治療を経験。子どものいない人生を受け入れる過程でUMUに出会い、現在は夫と保護猫との暮らしを楽しむ日々。
女性は家事も育児も仕事も、おしゃれも満点を目指さないといけない?
Y:「虎に翼」見てますかー?わたしは週末に一気見するのを楽しみにしてます!
M:わたしは昼休みに見てることが多いです。泣きながら見た日もありましたよ〜(涙)。
Y:Rさんは好きな登場人物やシーンってありますか?
R:たくさんあるから悩むけど、わたしは、寅子と一緒に女性初の弁護士になった先輩が言った、「結婚しなければ、半人前。結婚すれば、仕事も家のことも満点を求められる。絶対に満点なんてとれないのに」というセリフが印象的でした。
Y:そのシーンは辛かったですよね…。
R:仕事をしながら、妻も、母も、その役割をどれもちゃんとやり遂げるべし、という社会からの期待を押し付けられてしまう。これって現代も同じように感じている人、多いんじゃないかな?って感じたシーンでした。
セリフの通り満点なんてとれないのに、女性自身もその理想像をいつの間にか内面化して、「こうでなきゃいけない」とがんじがらめになって苦しんでる方も多いんじゃないかな。
Y:ファッション誌を読んでるとその圧力を感じることって多いかも。仕事も家事育児も、さらにおしゃれもしないと!というような感じで。本人がどれも楽しめているなら、もちろん最高なんですけど。
この先輩は、いわゆる「男っぽい」といわれるような割とサバサバした口調の人だったけど、弁護士になってから「ちゃんと女性らしく話しなさい」と指摘されて話し方を変えた、というエピソードもありましたよね。
当時は今と比較にならないくらい、「女性らしくあるべし」ということをあからさまに言われていた時代なんだろうなと思ってしんどかったです。
R:「結婚しなければ半人前」っていうのは、寅子も直面してましたね。
弁護士として働き始めるも、未婚の女性であることを理由に、依頼人からなかなか信頼されず案件を担当できないというようなことが続いてしまって…。
結局寅子は、「結婚している/いないということを、人間の信頼度を測る物差しとして使う人たちが大勢いる」ということに気づいて、社会的地位を得るために結婚を決意するんですよね。
Y:今の時代にそんなにあからさまなことはないとしても、この物差しは残っているのでは?と思いました。
こんなふうに、寅子が「はて?」となるような理不尽な出来事って、濃淡や形を変えながら今の時代まで連綿と続いてるんですよね。
他者の経験や抱えているものを知る、想像すること
R:Mさん、大好きなシーンがあるって言ってましたよね!
M:そうそう。わたしは、優三さんが寅子に対して、意を決して「(結婚相手は)僕じゃだめかな?」って伝えるシーンが大好き。優三さんは、かつて書生として寅子一家とともに暮らしていて、後に寅子の夫となる人です。
30年以上前に「あすなろ白書」で、キムタクがバックハグをしながら「俺じゃだめか?」って言うシーンがあったけど、もう完全に更新されましたよ〜。
(みんなで大爆笑!)
M:なかなかお見合い相手が見つからない寅子の状況を知った優三さんは、自分は寅子からそういう存在として見られていないことをわかっていながらも、「僕が結婚相手になりたい」って、そのチャンスを掴みに行ったんです。優三さんのその姿勢がすごい!と思って。
R:うんうん。
M:このチャンスは逃さん!というところに至るまでには、自分の中に育っている思いを見逃さないというか、自分が何が欲しいのか、ちゃんとわかってるんだなって。
わたし、このシーンを見て、「きゃっ!」って5センチくらい浮きました(笑)。
Y:そうか!あのシーンは素敵だったけど、そんな風に見ていなかったかも。優三さんはちゃんと自分の気持ちに気付いて大切にすることができる人ですね。だから他者のことも大切にできるのかも。
M:うんうん。あと、ドラマとして、登場人物にどういう背景があるのかを丁寧に描いていて、「人の持っている顔は決して一面だけではない」ということを見せているなとも思います。
わたしは、このUMUコミュニティで同じようなことを感じているんです。
というのも、わたしは死産を経験しています。このコミュニティにはわたしと同じ経験がある人もない人も、子どもがいる人もいない人もいますよね。この場に参加する前は、そうした経験や立場の違いによって社会的なカテゴリーが別になってしまっていて、違う世界の人と気持ちを分かり合うことは難しいんじゃないかと思ってました。
でも、それぞれの経験や思いを話しているうちに、「あ、わたしも共感するところがある」「今、わたしの思いを掬い取ってもらえた」と感じる瞬間があって、コミュニティの外でも、そのくくりを取っ払えたような感じがしてます。
Y:うんうん。
M:「とらつば」でも、全く違う立場にいるように見える人だけど、実はこんな経験をしてこんな思いを持っている、というところを丁寧に見せているなって感じます。
万華鏡をくるくる回していろいろな絵柄が見えてくるような感覚かなあ。見る人それぞれに「わたしもこれ知ってる、わたしも同じ景色を見たことある」と感じるシーンがどこかにあるのがこのドラマの面白さだと思います。
Y:役名もないような、背景になっている人たちにも、その人の暮らしがあるんだということを見せているのが印象的ですよね。
それから、人としてずっと同じ姿勢を貫くことの難しさというか、徹頭徹尾矛盾なくいられる人なんていない、ということも表現しているなって感じます。
具体的には、女性たちにも男性と同じ学びを!という考えを持ち、寅子が法学の道に進むきっかけをつくった男性教授が、本人がいないところで寅子の妊娠を上司に伝えてしまったり、仕事と育児の両立を心配するが故に無関係な仕事を寅子に紹介したりして、寅子が憤る…という出来事が描かれたことがありました。
最初は「この先生がこんな人だったなんて」とまで思ってしまったけど、この描き方を見てどんな人であっても自分の持っている志や掲げている理想と、行動や言動が違ってしまうことはあるよね…と感じました。自分だってそうだし…。
ドラマの中でなら完璧な人に設定することもできただろうけど、とても人間らしく描いているところがおもしろい!と思っています。
To be continued…!
編集/UMU編集部