「働きながらの流産・死産」を経験した女性32人のリアル─職場は当事者の喪失体験、そして職場復帰をどうサポートできるのか〜アンケート取材から<中編>

決して稀なことではない「流産・死産」。「流産」は全妊娠中に10〜20%の確率で起きるとも言われており、働く女性の4人に1人が経験しているというデータもあります。また、赤ちゃんの約50人に1人が、妊娠12週(4ヶ月)以降に亡くなる「死産」を迎えています。

にもかかわらず、会社組織や上司、同僚など一緒に働く人たちが、仕事の傍ら流産・死産を経験し、その後職場に戻る当事者をどうサポートできるのか、といった議論はほとんどなされていません。

UMUでは、流産・死産を経験した、仕事を持つ女性32人にアンケート取材を実施。

前編>では、働きながら流産・死産を経験した女性たちのリアルな声から、職場でのコミュニケーションの実態、産休の取得しづらさ、場合によっては有給を使って処置をしなければならない現実や、職場復帰後にまで続く苦痛と困難を知ることができました。

続くこの<中編>では、職場で傷ついた言葉や対応、逆に助かったこと、また、実体験を経て彼女たちに生じた価値観や働き方の変化などを見ていきながら、流産・死産を経験する女性に、これからの会社、そして働く個人がどのように寄り添うことができるかを、実践的に考えていきます。

 


当事者とともに働く人はどんな言葉をかけ、対応したらよいのか

職場環境をつくる一人でもある上司・同僚はどんな言葉をかけ、対応するのがよいのでしょうか。当事者でない限り、もちろんその悲しみや喪失感を全て理解することはできません。同じ当事者であったとしても感じ方、受け止め方は人それぞれです。

それでも、当事者のリアルな声を聞き実情を知ることは、身近に流産・死産を経験した人、またはこれから直面しうる人がいるときに、組織として、個人として、どう行動すべきかを考えるきっかけになるはずです。

 

  「傷ついた」言葉と対応

まずは、上司や同僚、部下や人事からの対応や言葉で、当事者が「傷ついた」と感じたことや、本人にネガティブな印象が残ってしまったことを見ていきます。

・「若いから」「次がある」と無理に励ますような言葉

「若いから大丈夫!今は赤ちゃんが来る時じゃなかったんだよ!仕事があるから切り替えなきゃね!」など他にもたくさん励まされたが、つらかった。同僚の数名に、「自分は死産や流産にはなりたくないから、なんでそうなったか教えて!みんなで〇〇先生の赤ちゃん見にいこ!あなたも忘れられるよ!」など言われた。
(保育士・30代前半・栃木県・だんでさん)

「若いから」「次があるよ」等たくさんあります。若くても死産しているのが現状ですし、次は次。娘は娘だから、代わりなんて誰もいないんです。
(パート・特別養護老人ホーム勤務・20代・千葉県・Ymamaさん)

先輩に、励ますつもりで「しょうがないね、でも次は大丈夫だよ」と言われたのがつらかった。生まれてこなくても、自分の子なので「次ってなに?」と思った。
(保育士・30代前半・北海道・ぐすぴちゃんさん)

・科学的根拠のない、「流産・死産の理由」を押しつけるような言葉

同僚(男性)からの「流産すると子どもができにくくなると聞いたことがあります」、同僚(妊娠中)からの「ちゃんと子ども欲しかったんだね。なんかそこに感動しちゃった」という言葉。上司からの「なんだ、逆の報告(おめでた)かと思った」、「うちもなかなか子どもできなくて家庭内がピリついたりしてね。まあその後できたんだけど」。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・さやさん)

「もう少し発見が早ければ助けてあげられたかもしれない」、という言葉。
(正看護師・急性病院勤務・30代前半・愛媛県・マッチさん)

「仕事辞めたら妊娠できますよ」、という言葉がつらかった。
(管理職・30代前半・東京都・匿名希望さん)

当時は結婚をまだしてなかったのもあり、「籍入れてないから子どもがダメになった」と言われた。
(正社員・コールセンター管理職・30代前半・福岡県・はむそらさん)

・「子どもは?」と聞かれること

妊娠した同僚に「結婚してるのに子どもまだ?」と聞かれたり、「つわりってつらいんだよ」と愚痴を聞いたりするのがつらかった。私にも子どもはいたし、つわりだって経験していた。でも、流産の事実をおめでたムードの相手に言えるはずがなく、自分でずっと抱えていた。
(正社員・クリエイティブ・30代前半・東京都・ASCAさん)

妊娠していたことすら知らない同僚から、流産した翌日に冗談で「出産日はいつ?」と聞かれたこと。新入社員から、挨拶の流れで「お子さんは?」と聞かれたこと。
(正社員・IT会社事務職・30代後半・東京都・匿名希望さん)

・「妊娠・出産」と「流産・死産」との間に、格差をつけるような言動や対応

単身赴任という事情があったため、せめて夫のいる関西への異動をさせてほしいと思い、すべての事情を話し幹部にかけあった際、幹部(ちなみに女性)から、「出産したら勤務地は配慮できるんだけどね」と言われたこと。
(正社員・専門職・30代前半・兵庫県・ころさん)

妊娠を報告した際に来客対応業務を外してくれた上司が、別の上司に流産報告後、私には何の相談・報告もなく、同業務を私に割り振っていたこと。
また、妊娠〜流産まですべて知っている別の上司が、肉体的・精神的苦痛をまったく省みず、来客があるたび他にも人はいるのに、何故か私に対応を任せたことが特につらかった。
(正社員・教育業総合職・30代前半・関西・Iさん)

上司からは、「授かるたびに出血だ、流産だ!と急に休まれると困る。前もって言って!」と言われた。
死産や流産手術後休んでいても、「育児ないんだし早く復帰できるよね?」と催促の連絡が絶えなかった。
(保育士・30代前半・栃木県・だんでさん)

・その他、配慮が十分とは言いがたい言動や対応

「原因は何なの?」ときかれたこと。
市役所の保健師に「無理したんでしょう」と言われたこと。
同僚に、「え、流産って産休もらえるんですか?」と悪気なくきかれたこと。
(正看護師・病棟勤務・30代後半・大阪府・Nさん)

夜中に自然排出したため、朝一番で上司に連絡したところ、まず最初に、いつから仕事に戻れるか聞かれたこと。その後よくしていただいたけど、まずは体調などを気にしてもらえたら、と思って悲しかった。
(正社員・専門職事務職・30代後半・東京都・あんなさん)

手術翌日に体調不良を理由に自宅勤務とした際に、何も知らないリーダーに、「体調不良なら休め。そうでないなら、きちんと稼働しろ」と言われたのがつらかったです。きちんと伝えていれば、もう少し心ある言葉をもらえたかもしれなかったけれど、プライベートな事であまり多くの人に伝えたくなかったので、話せなかったです。
(事務職・40代・東京都・ukkaさん)

 

  「助けになった」対応や言葉

反対に、当時の当事者にとっては助けになった、ありがたかったと感じた対応や言葉たちを見ていきます。

・無理に励まさず受け止め、いつもと変わらない対応

下手に具体的にコメントされるより「なんと言って良いか分からない」と素直に言われた方が受け取りやすかった。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・さやさん)

部署の全員から、励ましではなく「つらかったね」「大変だったね」「無理しないで」という声をかけてもらって、悲しい気持ちをじっくり消化できた。職場復帰後も、部署のメンバーが腫れ物に触るような様子ではなく、感情の波もそっとしておいてくれて、流産したという事実を何度も突きつけられるようなことがなかった。日常に戻りやすかった。
(正社員・専門職事務職・30代後半・東京都・あんなさん)

仕事では切り替えなきゃいけないので、何も聞かない。触れない。前と変わらない接し方が一番助かった。
(保育士・30代前半・栃木県・だんでさん)

・自身の経験を話してくれた

保護者の方々の中にも流産経験者が意外といることが分かった時は、“いつか自分にも…”と希望がもてた。中でも印象的だった方は、二人姉妹のお母さんが、1人目出産までに6回、1人目と2人目の間に2回流産していたと話してくれて、希望がもてた。
(保育士・30代前半・北海道・ぐすぴちゃんさん)

子どもがいる先輩保育士から「私も流産を経験したよ」「仕方のないことだからまたがんばろう」という話を聞けて、前向きになれました。
(保育士・30代前半・宮城県・anbabys2さん)

・寄り添って一緒に泣いてくれた

副師長が「大変だったね、もう働いて大丈夫なの?」と一緒に泣いてくれた。
(正看護師・病棟勤務・30代後半・大阪府・Nさん)

産まれてまもないころ、会社のみんなから実家に花がたくさん届いた。仕事には戻れない、辞めると言ったら、まずは休職したらと提案してくれた。休職手当の手配をスムーズにしてくれて、金銭的にも助かった。
私のボスは東京に戻ってきたら、すぐに一緒にランチに呼んでくれて、一緒に泣いてくれた。息子の写真を見せてと言われ、とても嬉しかった。亡くなったらから見たくないはずなのに、1人の子として扱ってくれた気がした。みんなも私から発信するのを待つだけで、なにも急かしてこなかった。
(正社員・タレントマネージャー・30代前半・東京都・オオマミホさん)

流産等がきっかけで、うつ休職するつもりであることを当時の部下に詫びた時、部下(男性)が「気づかなくてサポートできなくてすみません」と泣いてくれたこと。部下を育ててあげられず申し訳ないのは私の方なのに、泣かせてしまい申し訳なかったが、私のつらい気持ちを少しでも共感してくれて救われた。
(正社員・専門職・30代前半・兵庫県・ころさん)

上司に二度目の流産の報告をしたときに、「二度目だから慣れっ子です」と答えたら、「そんなことに慣れなくていい」と一緒になって泣いてくれた。
(正社員・IT会社事務職・30代後半・東京都・匿名希望さん)

・子どもの存在を認めてくれた

子どもの名前を聞いてくれて、名前入りのタオルと積み木をプレゼントしてくれて、とても嬉しかったです。
(パート・特別養護老人ホーム勤務・20代・千葉県・Ymamaさん)

部員一同から、子どもの立派な供養のお花とお線香をいただいた。お墓に飾らせてもらった。宛名はちゃんと子の名前だった。子の存在を認めてもらえた気がした。
(正社員・研究開発職・30代前半・東京都・來さん)

・その他、本人のタイミングを尊重した、過度ではない配慮やサポート

上司に流産の話をした際、「何もできなくて申し訳ない、今度美味しいものでも食べにいこう」と励ましてくれたこと。男性なのに、流産のことをよく知ってくださっている方で本当に助かりました。
その後も、「体調大丈夫?仕事は二の次で良いから、体調、ライフプランを第一に考えてね、制度でできることがあったら何でも言って」と声をかけてくださいます。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・yumyum_gyozaさん)

電話をかけた上司が先に人事部に連絡してくれたので、人事担当とはメールだけで全てやりとりを完結でき、泣いている所を見せなくて済んで良かった。
(正社員・研究開発職・30代前半・東京都・來さん)

とにかくしっかりと休んで、と労ってもらえたこと。仕事のことは復帰して落ち着いてから考えればよいと、はっきり言ってもらえたこと。
(正社員・営業職・30代前半・関西・まめちゃんさん)

上司から「心配はしているけど、迷惑なんてかかってないから!今は身体を一番に考えて無理せずにね」と言われた事はありがたかった。
(正社員・シフト勤務・30代後半・東京都・machannoieさん)

 

  「職場と本人が相互に理解しあう」ための働きかけや制度

なお、中には職場復帰をする際、前もって、職場の人たちに流産をしたことを綴った手紙とともに、『流産・死産経験者で作るポコズママの会』が作成した「職場の方へ」と「当事者への接し方」を共有していた方もいました。

励ましのつもりでかけられる言葉で傷つくことを避けたかったので、先回りしてこのような資料を渡すことにしました。
復職時はまだまだ複雑性悲嘆のなかで、前と同じように勤務する自信はとてもなかったし、もう仕事に来れるのなら元気になったんだと思われたくない、正確に自分の状態を表明しておきたい、と思ったからです。また、どのように接したらいいか困らせることも避けたかったので、手紙を作りました。
そのおかげかはわかりませんが、傷つく言葉をかけられることはほとんどありませんでした。
(正社員・福祉職・30代後半・東京都・きじむなーさん)

また今回、唯一海外(カナダ)から回答してくださった現地在住の30代女性の声からは、社会的制度や職場の理解がうかがえました。今回は海外からの参加は1件のみでしたが、日本と各国との流産・死産における対応や支援内容の違いについても、引き続き追いかけていきたいトピックです。

18トリソミーだったので、判明後堕胎手術する予定で、その前段階のラミナリア挿入後の夜に、陣痛→自然出産でした。
よって、18トリソミー発覚後から欠勤させていただいていて(精神的理由により。医師からの診断書であるメディカルノートも提出)その後も気が済むまでお休みしていい、と繁忙期も免除させていただきました。申請したければ、病欠手当も国の方からEI(失業保険)が出たと思います。
同僚たちもみんな「何かできることがあったら言ってね」と言ってくれて、助かりました。
(サービス業・30代後半・カナダ・匿名希望さん)

職場復帰時と、その後の休職相談時、きじむなーさんが職場に提出した手紙

 


流産・死産を経てからの「働き方や価値観の変化」

  心身の不調から、止むに止まれず職場を離れる人も

流産・死産を経験後の職場復帰を機に、自分のキャリアを見直し、異動願いを出したり、そのタイミングで転職したり、精神的な負担から休職を余儀なくされたりした人たちもいます。

・同じ会社で働き方/考え方を変えた

仕事の忙しさと流産は直接関係ないと思いつつも、不妊治療との両立や体質改善も視野に入れて業務負荷を軽くし、残業を最小限にした。ちょうど後輩が育ってきて任せられることも増え、働き方改革の時代の流れもあり、自然な形で無理のない働き方にシフトすることができた。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・さやさん)

休む権利は十分に行使するようになった。周囲に迷惑はかけるが、仕事の代わりはどうにかなると考えるようになった。
(正社員・営業職・30代前半・関西・まめちゃんさん)

流産だけでなく、不妊治療が心身ともにつらく、出張を免除してもらっただけでなく、マネージャー職のオファーを1年近く断り続けています。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・yumyum_gyozaさん)

社長に言われた言葉に傷つき、正社員からパートへ自ら雇用形態を変えた。
(正社員・コールセンター管理職・30代前半・福岡県・はむそらさん)

復職後1.5カ月勤務したのち仕事に行くことができなくなり、再休職を申し出、その後心療内科を受診し診断書を提出。診断書が出るまでは有給休暇を取りました。年度中に復職して同じところでまた働き続けることはとても難しかったので、年度替わりまで休職し、年度が替わるところで異動を希望しました。希望を受け付けてもらえ、4月から異動することになりました。
(正社員・福祉職・30代後半・東京都・きじむなーさん)

・退職した/転職した

6週でやっと胎嚢が確認できた2週間後に出血が始まり3週間続き、自然排出の流産でした。出血が始まった時は仕事中で、早退。翌日、流産手術になる可能性と、異物が体内に入ったままだと身体に悪影響だという旨を伝えた上で、「申し訳ないが休みをいただけないか」と交渉しようとしたところ、上司に「人が少ないから休んでもらったら困るから、この日に手術にしてもらおうか」と言われました。手術日を指定され、派遣だからなのかと思わせるような発言に驚きました。結果、今回は自然排出だったので手術はしませんでしたが、そのような対応をされた事がショックで、1ヶ月後に辞めました。
(派遣社員・20代・東京都・ぱぴこさん)

「なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ」という怒りが湧き上がってきて、自宅で頻繁に泣いて暴れたり、夫に離婚を迫ったりした。仕事中は笑顔で来客対応していたが、家に帰ると感情のコントロールができなくなり、顔面が痙攣したり、死にたくなったりした。夫に当たり散らすため、耐えられなくなった夫から退職するように説得され、翌日上司に「退職したい」と申し出た。そのまま翌月いっぱいで退職することになった。
(正社員・教育業総合職・30代前半・関西・Iさん)

流産後、産休8週を取得したが、体調不良のため産休後3ヶ月休職。しばらく自宅で療養していたが、職場復帰して子どもを出産して育てていけるかと考えた時に、物理的に早朝出社も難しく、そこまでして勤務したいと思える環境ではなかったので休職中に転職活動をし、不妊治療、出産、子育てがしやすい企業に転職することにしました。
企業にとって社員の代わりは効くが、自分の人生において何を優先させるかは、自分で舵を取ってコントロールしていかなければならないと感じました。
(正社員・事務職・30代後半・東京都・あんみつさん)

復帰はしたが、仕事を続けながら気持ちの整理をするのが大変だったので4か月後に退職した。今は、妊娠にはほとんど関係ない婦人科で仕事をしている。
(看護師・助産師・40代・東京都・Marikaさん)

・休職をした

2度目の流産後、不育症治療に力を入れるためにも、単身赴任中の夫との同居を目指し転職活動開始。ただ、エージェントや転職面接先には治療のための転職とはいえず、後ろめたさを抱えていた。
内定をもらったものの、その後通院先の心療内科から、今の状態で仕事を続けると、心身の状況が悪化する可能性を指摘され、休職を勧められる。2度目の流産後約4か月後から約4か月間休職。転職先の内定は辞退。
(正社員・専門職・30代前半・兵庫県・ころさん)

流産してからメンタルの不調が続き、適応障害や重度うつになって休職を余儀なくされた。
(正社員・クリエイティブ・30代前半・東京都・ASCAさん)

 


職場は、社会は、当事者をどうサポートできるのか

  流死産は「誰にでも起こりうること」だと理解したうえで、制度設計を

ここまで、声かけやコミュニケーション面、制度や施策面など、働く当事者が体験するリアルと実態、直面する課題を、さまざまな観点から掘り下げてきました。
流産・死産を経験した人たちと、これから経験する可能性がある人たちを、私たちの社会制度や組織体制、そしてともに働く個人は、どう支援することができるのでしょうか。
これからの社会において、経験者である32人の女性たちが思う「もっとこうしてほしかった」ことや「こう変われば良くなる」改善案を、ポイントを抜粋してお伝えしたいと思います。

・健康面だけでなく、メンタルをケアする仕組みを

産後1ヶ月健診が終わると医療ケアは途絶え、社会に放り出されたように感じた。欧米のように赤ちゃんを亡くした人をケアする機関が、行政に必要だと思う。赤ちゃんがいなくても、産後なのだという認知が広がってほしい。そうすることで、メンタルケアが必要な人が心療内科を受診したり、無理に復職したりする人が減るのではないかと思う。
(正社員・福祉職・30代後半・東京都・きじむなーさん)

全員が必要ではないかもしれないが、気軽にカウンセリングを利用できる仕組みがあるとよい。ただ話を聞いてもらう、自分を肯定してもらうだけでも、救われる部分があると思うので。
(フルタイム勤務・30代後半・東京都・匿名希望さん)

必要に応じて産業医との面談などを勧めてもらえると、より自分の体調やメンタルと向き合ったり、会社として仕事の量をきちんと調整してもらえたりしたかもしれないです。
(事務職・40代・東京都・ukkaさん)

・特別休暇など、流産・死産後に十分に休みが取れる制度を

3ヶ月以内の流産でも、公休制度を認めてほしい。体は1週間程度で回復しても、心はずっと回復しない。すぐに働ける精神状態ではない。私のように何度も流産を繰り返す不育症患者は、有休だけではとても休暇日数が足りず、欠勤扱いになって給与が激減する。そうすると不育症治療に捻出できるお金もなくなり、子どもを諦めざるを得なくなる。
(正社員・クリエイティブ・30代前半・東京都・ASCAさん)

4ヶ月未満の流産に対して、社会制度が少ないと感じました。これだけ働いている女性が増えているのですから、せめて特別休暇を認めてくれるなどのサポートがあったら良いと思います。
会社・社会に貢献しながら、この苦痛を自らの力だけで越えるには、あまりにもつらいです。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・yumyum_gyozaさん)

不妊や不育症の診断がある人は、不妊治療や不育治療で休める制度がほしい。
(保育士・30代前半・栃木県・だんでさん)

・管理職のトレーニングを

親しい同僚に話す人もいると思うが、仕事への影響を考えて上司にまず話す人は多いと思う。だからこそ、上司の対応、言葉はとても大切。気を遣いすぎず、仕事の調整をしてくれるとよい。
(看護師・助産師・40代・東京都・Marikaさん)

「母子健康管理カード」や安定期前の妊婦社員への配慮の仕方など、会社ですべての管理職にトレーニングする必要があるかと思います。
(正社員・事務職・30代後半・東京都・あんみつさん)

社会や職場の人へ。あなたがたが知らないだけで、妊娠したが流産・死産してしまった人が実は身近にあふれているということを知って発言・行動をしてほしい。
同僚や部下などが流産・死産したことを知ったときには、業務上で気遣いを見せてほしい。そして「つらかろう」「苦しかろう」と思って勝手に仕事を取り上げることもしないでほしい。何事においても、本人に相談してほしい。
(正社員・教育業総合職・30代前半・関西・Iさん)

・妊娠・出産・流産について、正しい知識を

流産について正しい知識を持ってほしい。よく流産した患者に対して医師が言う「多くは染色体の異常で母体のせいではない」という台詞は、本人ではなく、周りの人にこそ知ってほしい。デリケートな話題であり、本人の同意なく噂にするのはハラスメントに等しい、という認識を持ってほしい。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・さやさん)

流産は誰にでも起こりうること。しかし、誰にでもあることだからといって、軽く見ることはできない。妊娠や流産は心身にすごく大きな変化が生じるということを従業員、管理職が知る機会があるとよい。
(正社員・専門職・30代前半・兵庫県・ころさん)

特に妊娠中期以降の流産は、本人も周囲も対応が非常に難しいと感じます。まずは、妊娠したら無事出産するのが当たり前ではないこと、言わないだけでかなりの女性が流産を経験していること、つわり等のマイナートラブルは個人差がとても大きいことを、当たり前にみんなが知っている社会にできれば嬉しいです。
(正社員・営業職・30代前半・関西・まめちゃんさん)

・話しやすい、相談しやすい、休みやすい環境の構築を

妊娠初期や妊娠の可能性の段階でも、職場や部署に話しやすくなるとよいと思う。妊娠は特別なことや職場に迷惑をかけることではなく、誰にでも起こる当たり前のことであり、不幸にも流産に終わることもあるという認識へ変わっていって欲しい。働く女性が増えている今、生理も含め、ウィメンズヘルスについての理解と話しやすさが必要だと感じる。
(正社員・専門職事務職・30代後半・東京都・あんなさん)

妊娠発覚後は何があるか分からないから職場報告は難しいと思いますが、初期の時期こそ、身体を大事に出来る環境であればと思います。
(正社員・コールセンター管理職・30代前半・福岡県・はむそらさん)

不妊治療している人だけでなく、誰しもがもっとさまざまな理由で、仕事を休みやすい雰囲気になるといいと思う。
(正社員・シフト勤務・30代後半・東京都・machannoieさん)

 

ここまで、流産・死産を経験した32人の働く女性のリアルな声から、当事者の大きな喪失感に伴う精神的・身体的苦痛、そこにさらなる苦しみを与えてしまう職場環境があることもわかりました。

流産・死産は誰にでも起こりうることで、自身が経験するかもしれないし、身近で苦しんでいる人がいるかもしれない。悪意はなくとも、心ない一言で、人知れず誰かを深く傷つけてしまうことがあるものなのです。
まずは社会で働き暮らす私たち一人ひとりが、その事実を「正しく知る」ことから、始めるべきなのだと思います。

その上で、上司、部下、同僚、一個人として、その痛みを完全に理解できなくとも想像力を働かせて行動し、心身を休める時間を取ることができる制度設計など、サポート体制を整えていくことができたら。

少しずつでも、当事者がその苦しみをひとりで抱え込まなくてもよい社会になることを、編集部は願ってやみません。

この後に続く最後の<後編>は、番外編として、社会や職場へ、そして同様の状況に直面している/これから直面しうる女性たちへ発信していきたい、経験者のみなさんからの珠玉のメッセージ集、計16篇をお届けします。

 


アンケート取材および編集・文 / 徳 瑠里香、UMU編集部

取材協力(Special Thanks) / ぐすぴちゃんさん、さやさんanbabys2さん、おにぎりさん、きじむなーさん、Nさん、オオマミホさん、ぱぴこさん、ukkaさん、Ymamaさん、來さん、ころさん、マッチさん、まめちゃんさん、みくまゆたんさん、あんなさん、yumyum_gyozaさん、Iさん、はむそらさん、Marikaさん、momoさん、machannoieさん、だんでさん、おまめさん、ASCAさん、あんみつさん
他、全32名のみなさん


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