流産・死産経験者から贈る、16篇のメッセージ
社会、職場、そしてこれを読んでくれている当事者の女性たちへ向けて
仕事を持ち、働きながら流産・死産を経験した人のリアルと、そこから私たちの社会、職場ができること・すべきことをテーマに、<前編><中編>と全3回に渡り連載してきたシリーズ。
最終話となるこの<後編>は、番外編です。
社会や職場へ、そして同様の状況に直面している/これから直面しうる女性たちへ発信していきたい、経験者のみなさんからの珠玉のメッセージ集、計16篇をお届けして、本連載を終わりたいと思います。
現代の医学ではまだ、人が命を生み出す過程で「流産・死産」をゼロにすることは不可能であり、だからこそ、私たちの会社そして社会は、その当事者がこれからも生み出され続ける現実をより真摯に見つめ、寄り添い、彼女たちが「生きづらさ」「働きづらさ」を感じずに、その経験とも“共生”できる環境を、ともに作る責務があるのではないでしょうか。
本連載が、今流産・死産の苦しみの中にある方や、これから越えていこうとする方の糧となり、彼女たちが生きる未来が少しでも変わる一つのきっかけとなるよう、編集部一同、心から願っています。
複数回の流産を経験し、妊娠したら出産が当たり前ではないと思うようになったため、無事に出産した際も最後まで不安しかなく、「妊娠中」というよりも「まだ流産・死産していない」という感覚でいた。そんな自分とは対照的に勝手に妊娠の噂が広まり「聞いたよおめでとう!」「楽しみだね!」「もしかしてそうかなーと思ってたんだ!」「なんでそんなネガティブなの?もっとポジティブに!」などと同僚たちが勝手に盛り上がるのは、恐怖でしかなかった。妊娠=出産ではないという認識が広まってほしい。流産以外にも年頃の女性が体調を崩すことは多々あり、既婚女性の体調不良=妊娠に結びつける、下世話な文化をなくしたい。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・さやさん)20週で死産しました。15週で破水してしまいそのまま止まらず赤ちゃんが亡くなってしまいました。陣痛も出産も痛みも普通にあるのに、赤ちゃんは泣かないのです。冷たいのです。火葬をしなければならないのです。10年前だったので心のケアはほぼなく、とてもつらかったです。
特に臨月で赤ちゃんを亡くした方のつらさは、はかりしれません。社会全体で、そういう方のメンタルケアやサポートをしてほしいです。
(保育士・30代前半・宮城県・anbabys2さん)会社自体は妊娠出産に理解があるが、男ばかりの体力、力勝負の課で妊娠しながら仕事を続けるのは体力的にも精神的にも厳しいと感じた。気持ち的にも助けを借りづらく、非常に残念だった。
産休が明けてから同じところで仕事を続けるなら、「こうして欲しい」と、すべては伝えにくいかもしれないけど、もう、ワガママになるのが一1番かもしれない。お腹の子を守れるのはママだけだし、死んじゃったら、誰も責任は取ってくれない。
会社側も、本人が言い難いことを抱えているかもしれないから、定期的に話し合う場を設けてほしい。
(正社員・染色整理業務・20代・愛知県・おにぎりさん)産後8週間後、かなり無理をしてみなさん復職しているように感じる。複雑性悲嘆の中で、前と同じように働くには時間がかかると思う。ヘトヘトになって帰宅しても、赤ちゃんのことを思う時間を十分に取れず自分を責めている方を見かけると、胸が痛む。
(正社員・福祉職・30代後半・東京都・きじむなーさん)流産死産を周りがタブー視して、当事者が何でもないふりをしながら生きていくしかない現状が悲しい。上司や事務は、敢えて淡々と対応しているように感じた。
(正看護師・病棟勤務・30代後半・大阪府・Nさん)流産はプライベートなことで、あまり多くの人に話したくないので、信頼できる誰かが職場にいてくれると心強いと思います。
(事務職・40代・東京都・ukkaさん)まさか自分が。あんなに元気だったのに。なんで私の子が?…と取り乱して当然だと思います。誕生を待ちわびて、夫婦でお腹に手を当てて胎動を感じ、毎日声をかけ、小さな新生児服を楽しみに選び、水通しし、周囲に報告して……なのに突然奈落の底に突き落とされる経験は、筆舌に尽くし難いつらい経験です。毎日お腹の中で育てていた期間も私たちにとっては母親である期間だから、当然だと思います。
つらい、悲しい、苦しい、痛い、何がつらいのか分からない、…そんな全ての気持ちを自分一人で抱え込まないでほしい。街を歩く妊婦・子連れの家族が羨ましい、恨めしい、憎い、そんな気持ちを抱く自分が嫌い、…全てあなたのせいではないと伝えたい。同じ気持ちを抱く人はいると思います。
社会…への発信はなんと言えば良いのか難しいですが、流死産はレアな事ではありません。たまたま貴方の近くで経験者がいなかったか、あえて口にしていないだけです。当事者によって求めるものは違うと思うので、何を必要としているか聞き取りをお願いしたいです。
あと産前休業が34週からというのは、正直遅いと思います。母体と胎児を守るためにも30週くらいから取れるように、任意で遅らせる分は可能というようにしてほしいです。
(正社員・研究開発職・30代前半・東京都・來さん)人生で味わったことのない、底知れない絶望と虚無感を経験しました。特に中期流産の後は精神的にも肉体的にもダメージが大きく、産休中も何も手がつけられない状態が続きました。残念ながら同じ経験をされた人には、悲しい時に悲しい気持ちを我慢しないことが大切だとお伝えしたいです。たくさん泣いて何もできない日が続くかもしれませんが、無理に気丈に振る舞うとずっと後からでも歪みが出てきて、立ち直るのに更なる時間と気力を要します。
日本の社会に対しては、性教育にもっと力を入れていただきたい。妊娠するということ、出産に至るまでの母体への負担や流産のリスク、産後の心身のダメージ、私を含めてほとんど知らずに親になる人が、とても多いです。
(正社員・営業職・30代前半・関西・まめちゃんさん)不妊治療における体外受精では、着床前診断を行えば流産を回避できる可能性が相当高いにもかかわらず、日本産婦人科学会により、遺伝性の病気や変異がある人、習慣性流産の人など一部の人にしか認められておらず、一般には認められていません。
流産は、精神的にも、肉体的にも大変な苦痛を伴います。仮に染色体異常によるものだとしてもそう簡単に割り切れるものではないし、おそらく経験した人間でないと分からない痛みを伴うものです。
ですので、そのようなつらく、悲しい流産を減らせる可能性のある着床前診断を1日でも早く解禁し、一人でも多くの妊婦さんが流産の悲しみを味わうことのないようにして欲しいと思います。
(正社員・IT会社事務職・30代後半・東京都・匿名希望さん)流産に対する理解は、復帰やその後の精神面・体調面の回復にとても重要。多くの方が、妊娠・流産について理解し、いざというときにサポートできるようになっていただけたらと思う。
(正社員・専門職事務職・30代後半・東京都・あんなさん)私の母親は流産を幸いにも経験したことがなく、私が打ち明けた時にもあっけらかんとしていて、寄り添って貰えなかったことがつらかった。でも後々話を聞くと、つらさが本当に『分からない』んだと知りました。
流産のつらさは分かってもらいにくい。そしてあまり公言しないので、顕在化しにくい。
私にはTwitterという吐き出す場所や、共感してもらえる場所があってすごく助かったので、抱え込まないことと、ゆっくり、ゆ〜〜っくり体調を整えてほしいと思います。
なお、流産手術をした不妊治療専門院の先生からは、ここまでダメージがあるとは、説明もケアもありませんでした。せめて、婦人科の病院がケアする受け皿を選択肢として用意してくれたら、と思います。
ただ、カウンセリングなども高額で、不妊治療でお金がかかっているので二の足を踏んでしまいます。保険治療で、カウンセリングが試せる場所などがあれば嬉しいです。
(正社員・営業職・30代後半・東京都・yumyum_gyozaさん)自身で思っている以上に苦痛は大きい。仕事は無理をせず、休めるときは休んで回復を目指してほしい。そして、「誰にも理解されない・理解してもらおうと思わない」と意固地にならず、助けを求めてほしい。SNSでもいい。同じ経験をした人や痛みをわかってくれる人はたくさんいて、どれほど心の支えになるか知れない。どうか一人で苦しまないでほしい。
(正社員・教育業総合職・30代前半・関西・Iさん)流産経験は経験した人にしか分からないことが多いと思います。だからこそ、どこかで吐き出せる場所があればと感じます。何より自分を責めないでください。泣くことを我慢しないでください。
(正社員・コールセンター管理職・30代前半・福岡県・はむそらさん)流産は突然の出来事で、手術をするために休みをとるくらいしかできない人が多いと思います。しかし、流産は気づかないうちに心身に様々な影響を与えています。どうか自分を労ってあげてください。自分を責めないでください。身体だけではなく、心も回復するのに時間がかかります。SNSには当事者もいます。つらいことがあれば吐き出してください。
(正社員・専門職・30代前半・兵庫県・ころさん)何人子どもがいても、亡くした子どもはかえって来ないし、忘れることは絶対にない。
思い続けて生きていこうと思います。誰が忘れようとお母さんがずっと思っています。
思い思いの感情があるので、自分の気持ちを大切にしてください。
(正看護師・急性病院勤務・30代前半・愛媛県・マッチさん)私は塞ぎ込んでいるとき、死産した人の本やブログや不妊治療関連のウェブサイトなど、みんながどんな経験をして、どんなふうに生きていっているかを読んで、絶望のなかにいる自分があとどれくらいでこんなふうに前向きに生きていけるのかなぁ、と思ったりしていました。
泣かないでいれる日はくるのかなぁと。骨壺を持ち歩かないでいられる日はくるのかなぁと。時間がかかりすぎたりしてもいいんだな、いろんな人の生き方があっていいんだな、と思える日が早くきますように。
(正社員・タレントマネージャー・30代前半・オオマミホさん)
アンケート取材および編集・文 / 徳 瑠里香、UMU編集部
取材協力(Special Thanks) / ぐすぴちゃんさん、さやさん、anbabys2さん、おにぎりさん、きじむなーさん、Nさん、オオマミホさん、ぱぴこさん、ukkaさん、Ymamaさん、來さん、ころさん、マッチさん、まめちゃんさん、みくまゆたんさん、あんなさん、yumyum_gyozaさん、Iさん、はむそらさん、Marikaさん、momoさん、machannoieさん、だんでさん、おまめさん、ASCAさん、あんみつさん
他、全32名のみなさん
ご協力、本当にありがとうございました!
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