はじめに
これまで産む・産まないにまつわる人生をリアルに伝えてきたストーリーメディア、“UMU”が手がける「キャリアと出産をめぐる もやもやフィールドワーク~産む?産まない?産みたい?/通称:キャリもや」が開催されました。
~キャリもやとは?~
ナビゲーターとなる女性たちが登場し、「産む?産まない?産みたい?」にまつわる自身の状況や未来のイメージ、今知りたいことなどを座談会形式でワイワイおしゃべりするシリーズイベントです。全5回を通して、それぞれにとっての“わたしの答え”がちょっとでも見えてくることを目指します。
キャリもや主催者の一人であり、UMUファウンダー西部沙緒里は
「これまで女性たち(人事や経営者ではなく、一般人として)がオープンでフラットに、産む・産まない・産みたい、について議論できたり、考えたりする場所はあるようでなかったのではないか。だから、それをまずはつくろうと思い企画した」
と話します。
第1回は、それぞれのもやもやを言語化、可視化していくことを目的としています。そのため、あえてイベント冒頭から、「この初回はもやもやの最高潮で終わります」との宣言がなされました。
その言葉通り、それぞれステータスの違う女性ナビゲーターが非常に濃く熱く語り、中にはいい意味で、もやもやがさらに深まったと 言うメンバーも。当日の様子をダイジェストで、インターンこだまよりお届けします!
>>>当日の様子を動画で観たい方へ。アーカイブ(見逃し配信)チケット購入はこちら!
出演者プロフィール
- ナビゲーター
くりの さやかさん #NPOスタッフ #そろそろ子ども?
27歳で結婚。そろそろ子どものことを考えたいけど、仕事とキャリアのことを考えると産み時を考えてしまう。パートナーと子どもをもつ考え方の違いにもやもや。
なかはら まりさん #中間管理職 #「いつか」と「今」で悶々
長年付き合ったパートナーと婚約したタイミングでやりがいのある仕事を任される。徐々に彼との子どもを想像できなくなり婚約破棄。紆余曲折あり、今年の春に卵子凍結を決意。
渡辺 優さん #フリーランス #ステータスもやもや中
仕事が大好き!30代後半で焦りはあれど、養子縁組なども選択肢としてあるんじゃない?でも、日本での子育ては、私には無理ゲーだなと思っている。
小笠原 舞さん #保育士起業家 #2人目妊娠中
現在妊娠9か月、切迫早産で絶対安静中。保育士時代の経験から、子どもも大人ものびのびできる社会づくりを目指す。3度の流産を経験。
西部 沙緒里 #UMUファウンダー #2児の母
子どもを持てないと思っていた人生からアラフォーで2児の母となる。36歳で乳がんを経験し、自分が産むということについて真剣に考える。
- 特別ゲスト/全体アンバサダー
秋本 可愛さん #株式会社Blanket代表 #結婚2年目
介護と福祉に特化した採用・育成・定着支援を行う。2021年に結婚。この5月末に結婚式を予定。
女性のワークとライフにまつわるライトニングトーク
まず始めに、初回のメインナビゲーター・さおりが、女性のワークとライフ、そして産みどきにまつわる現状について、具体的な統計データを交えて解説していきました。
全ての前提となるのは、女性の産む・産まないにまつわるライフイベントは、仕事を一番頑張りたい年次とシンクロしているという事実!これって無理ゲーじゃない?という縮図が出来上がっています。
そして、“カップルの5.5組に1組が不妊に悩んでいる” “不妊治療は底なし沼で仕事と両立できない人が34.7%”といった統計データも続いて示されました。多くの女性が、望んだ時期に産めないことに悩んでいるのです。
さらに、出産後に働き方を変えるのはほぼ女性であり、女性の2人に1人が“難易度や責任の度合いが低く、キャリアの展望もない仕事をし、マミートラックに陥っている”という現状も(出典:21世紀職業財団)。
そうした社会環境の下行われた女性の幸福度調査では、“子どもがいる&働く女性”の幸福度が最も低く、 “子どもがいない&専業主婦”の幸福度が最も高い(出典:慶応義塾大学経済研究所(佐藤一磨氏))という結果もあるとのこと。
さおりからは「これだけ多様性が認められてきた現代なので、『産まない』選択を含め、より多くの人が産む・産まない、子のいる・いないにとらわれず、人生を後悔なく自由に生きていける社会になったらいい」との話がありました。
とはいえ…まだまだ現実には、男女ともに大多数の人が、当たり前に「子どもがいる」家族像や人生をイメージしていることも、UMU編集部によるオンライン調査で分かっています。
幼少期から持つ家族イメージのステレオタイプや、周囲から子どもを産むことへの期待がある中、産まない選択をした人や、子のいない人生を歩んでいる人たちに生きづらさがあることは想像に難くありません。
産む、産まないを決めるのは本来女性自身であり、同時に、働き続けたいと望むのも女性自身。未来を選ぶために、できること、考えられることは何かを、もやもやだけで終わらせずに考えヒントを集め、1人1人の答えを見つける。
それって本当に大切なことだな、と改めて考えさせられるトークでした。
クロストーク座談会
ライトニングトークの内容を踏まえ、「それぞれのキャリアと出産にまつわるもやもや」をテーマに座談会がスタートしました。以下、その一部をダイジェストでご紹介していきます。
※敬称略
さおり「まず最初に、それぞれのキャリアと出産にまつわるもやもやについて語っていきましょう。お話しできる方いますか?」
くりの「では私から!今一番もやっとしているのはパートナーシップです。パートナーと話し合って、妊娠、出産、出産後について色々と決めても、いざその時にその通りにいかなかったら変えなければいけない。本来二人のことなのに、実際にはパートナーに“お願いして変えてもらう”感覚になっちゃいそうだなと…。例えば、自分が働けないときはパートナーに働いて欲しいけど、自分の体がしんどすぎたら働くより家事育児優先してほしいと思うかもしれない。その時に『いや、前にそれ決めたじゃん』って言われたら傷つくなぁとか。その状況にならないとすり合わせも難しいし、怖いなぁと思ってるんですよね」
さおり「実際そうなってみないと分からないところだよね…」
まい「それって妊娠中に限らず、出産後も常につきまとうんですよね。育ってきた環境が違うから理想の家庭像が違ったりして。その時にならないと分からないから、常にすり合わせ続けるしかないという」
さおり「本当にすり合わせ大事!とは言え、パートナーには期待しちゃうよね。だからすれ違ったり、なんでわかってくれないの?こんなに頑張ってるのに!が発生するよね。それで不仲になったりもするし」
くりの「だからいっそ、産んで不仲になるなら産まない選択もありかな、とかも考えちゃうんです。産むこと自体、身体へのダメージやリスクもあるし、だったらポジティブに養子もありなんじゃないかって思ったりもします」
可愛「パートナーとのすり合わせで言うと、妊活時点からすでに始まってくると想像してます。それこそ妊活への意識って男性と女性で全然違うと思っていて、女性は妊活に関するリテラシーって高まるけど男性ってそこまでじゃないと思うし。温度感を合わせるのって難しいですよね…」
まり「私は今はパートナーがいないので、興味のある仕事にコミットできていて自己実現するに良いタイミングなんですよ。その一方で、本当に産むならあと2~3年が勝負だっていう自覚もあって。そもそも出会いの場に行かないとだし。すでに広義でいう妊活が始まってるんじゃない?!と思うと、それが少し仕事のモチベーションを下げてくるんですよね。うまく言えないけどもやもやしてます」
さおり「パートナーがいると相手との価値観、考え方の差でもやもやしたり、いないときはタイムリミットを考えたり、1人で生きるほうがいいんじゃないか?という悩みも出ますよね。パートナーがいる・いない、年齢、ステータス、子どもが欲しい度合もあるし。もやりも多様だよね…」
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こんな風な濃厚トークを入り口に、ここから約1時間、当日参加者からのチャット質問にもお答えしながら、パートナーシップ、産む・産まないの選択、妊活、出産、育児、パパの育児知識、子育てをもっと社会全体でできないか、都会と田舎どっちで子育てするか等々…。
様々なキーワードが飛び交う座談会となりました。
最後に
2時間にわたるキャリもや、第1回はあっという間に終了。この会では何か答えが出たわけではありません。全5回のシリーズを通して「こうなりたい」という姿をそれぞれが定義し、探求していきます。
最後はさおりからのメッセージで、締めくくりとなりました。
「社会は急に変えられないですが、こういうテーマを語れる場があることで、ちょっと希望を持てたり、乗り越え方のヒントが集まったりするんじゃないかと思っています。結果としてそれが社会を生き・働きやすい場所にすると思ってこの場を企画しました。一緒にその未来を真剣に、楽しく考えていけたらいいなと思っています。残り4回、ぜひご一緒してくださったらとても嬉しいです」
このフィールドワークで、自分自身の見える世界、考え方が広がりそうだなと感じる初回でした。次回が楽しみです!
>>>当日の様子を動画で観たい方へ。アーカイブ(見逃し配信)チケット購入はこちら!
次回(シリーズ第2回)のご案内
5月26日(木)19:30~ 「卵子凍結」「プレコンセプションケア」を医師&研究者と語る
〜いつ産むか決めていないけど、今からできることって?/まだまだ働きたいけど産める可能性は失いたくない!
2名の専門家から、産む?産まない?の選択のベースとなる基礎知識を学び、今できる備えについて考えます。
前田恵理 先生(秋田大学大学院医学系研究科 准教授)
松本玲央奈 先生(一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアム 代表理事/生殖医療専門医)
※プレコンセプションケア(Preconception care)とは、将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うこと。妊娠を計画している女性だけではなく、すべての妊娠可能年齢の女性に大切なケアを指します(成育医療研究センターHPより)。
専門家を交えてのお話は、より具体的に産む、産まないを考える会になるのではないでしょうか。ご興味のある方はぜひお申し込みください!
→お申し込みはこちら
(第2回だけでなく、初回アーカイブや5回分まとめてなどもご購入いただけます)
最後まで目を通していただきありがとうございました。ご参加いただいたゲストの方、参加者の皆さま、本当にありがとうございました。
文 / 小玉早紀恵